中学受験のために、大手進学塾に通っている生徒が、弊社にも来てくれています。
この生徒達の勉強している内容を見ていて、今、その内容をする必要が本当にあるのだろうかと思わずにはいられません。
これは、塾講師になってすぐの時から、ずっと思いっていることなのです。
例えば、濃度の違う食塩水を混ぜる問題などは、天秤法を使えばとても簡単に答えが出るために、高校の入試問題を解いていても、天秤法で解いてしまう子どもいます。
それでは、数学を使って、方程式を立てることをしなくなります。
もちろん、解答だけを求めるのであれば、天秤法でもいいのですが、方程式を立てることが面倒だということになってしまい、できるだけ算数で解くようにしてしまうのです。
算数ができた生徒が陥りやすい点だと、いつも子ども達には注意をしています。
また、理科では、中学受験塾が教えている内容、言い換えれば、中学受験の出題内容と、中学校で学習する内容の差があまりなく、中には中学校で学習する内容よりも難しいことを教えている塾もあるくらいです。
それでは、中学校で何を学習するのかわからなくなってしまいます。
中学校でさらに自然科学の現象を深掘りできるなら、知識として小学生の段階で学んでも意味があるかもしれませんが、ほぼ同じような内容を知識として教えるだけでは、中学受験のための知識と変わりません。
公立の学校では、難関大学に合格できないから、私立中学・高校に行く、という考えはわからなくもありません。
しかし、考えてみてください。
中学受験をしようとしている学校の生徒全員が難関大学、特に難関国立大学に、一体何人合格していますか?
大阪大学や神戸大学に合格者を出している高校の上位10校を調べたときに、私国立高校からの合格者は、大阪大学では須磨学園(9位)、清風南海・附属池田(ともに10位)、神戸大学では大阪桐蔭(6位)というだけで、あとは公立高校が上位を独占している状態なのです。
反対に言えば、例えば神戸大学で言えば、神戸海星女子(40位)や明星(40位)、高槻(51位)といった学校に中学受験から入れたところで、公立トップ校の数には到底、勝てないのです。
京都大学の合格者数ですら、ベスト10に北野、天王寺、膳所、奈良、堀川といった公立高校が灘、甲陽、東大寺、西大和、洛南、洛星と並んで入っているのです。
ですので、本当に中学受験をすること、その内容を小学生に学ばせるのは、どういうことを意図してなのか、どういう目的があって、その中学受験をさせるのかということを、ご家族にはもう一度考えて欲しいと思うのです。
それよりも、もっと小学生の間に、学ぶことの楽しさや知的好奇心を満足させてあげることの方が大切だと思います。
もっと知りたい、考えてみたい、ということを味わわせてあげることの方が、ずっと高校、大学と進んだ時に、学ぶことの本当の楽しさがわかるのではないかと思わずにはいられません。
今、その内容を学ばせ、無理に覚えさせ、中学受験させる必要が本当にあるのか、ご家族にはお考えいただきたいと思います。